
これまでミドルレンジ3D CADは100万円前後で企業向けに販売されていたので、個人で購入するソフトウェアとしては、あまりにも高額で手が出しづらい価格帯でした。
しかし、ミドルレンジの3D CADとして、個人向けに低価格で販売開始されました。それが『AutoCAD Inventor LT 2010』です。
『AutoCAD Inventor LT 2010』の定価は¥236,250になっています。まだ、これでも少し高額に感じるかもしれませんが、AutoCAD Inventorの上位版である『AutoCAD Inventor Professional Suite 2010』は、定価¥1,228,500ですから、この価格と比べると個人でも手が届く価格まで下がったのではないでしょうか?
もうちょっと詳しく見てみると、『AutoCAD Inventor LT 2010』は、2次元CADの『AutoCAD LT 2010』と3次元の『Autodesk Inventor LT 2010』をパッケージ化した商品で、2D-CADである『AutoCAD LT 2010』の定価が¥199,500ですから、3D-CADの『Autodesk Inventor LT 2010』は、¥236,250 - ¥199,500 = 実質36,750円!で買えてしまいます。
パッケージ販売しているのだから、この計算ちょっと違うという気もしますが、単純に2つのCADソフトを購入すると考えると、CADソフト一つの価格は ¥236,250 ÷ 2つ = ¥118,125 となります。本格的な3D CADが、この価格なら個人でも購入できます。
2次元CADの『AutoCAD LT』も、2D CADのディフェクト・スタンダードとして、すでに確立されているので、買って損はないでしょう。(なお、残念ながら『Autodesk Inventor LT 2010』、3D-CAD単体での販売はしていません。)
『Autodesk Inventor LT 2010』の価格が検討する対象になりましたから、次は機能を見ていきましょう。次の表は3D CAD『Inventor』の機能を比較したものです。
Inventor 機能 | Autodesk Inventor LT | Autodesk Inventor Suite | Autodesk Inveontor Professional Suite |
3Dモデリング | ◯ | ◯ | ◯ |
2D作図 | ◯ | ◯ | ◯ |
DWGファイル操作 | ◯ | ◯ | ◯ |
データ交換 | ◯ | ◯ | ◯ |
レンダリング (Inventor Studio) | ◯ | ◯ | ◯ |
DWFおよびPDFパブリッシュ | ◯ | ◯ | ◯ |
3Dアセンブリ モデリング (組立図) | | ◯ | ◯ |
板金設計 | | ◯ | ◯ |
標準部品ライブラリ | | ◯ | ◯ |
構造/機構設計、配管/配線設計 | | | ◯ |
Autodesk Vaultとの連携 (データ管理) | | ◯ | ◯ |
カスタマイズおよびサードパティー・アドインとの連携 | | ◯ | ◯ |
定価 (税込) | ¥236,250 | ¥892,500 | ¥1,228,500 |
個人や個人事業で使用することを前提に、『Autodesk Inventor LT』に含まれない機能を考えてみます。
まずは、「Autodesk Vaultとの連携」機能はデータの管理ですが、大企業のように複数の設計者がデータを共有する時に便利ですが、個人ではデータはフォルダで管理する方が解りやすく早くいので全く必要ないですね。大企業であってもデータ管理ソフトは、運用するのに利用者の徹底した教育が必要になるので、なかなか使いこなせないのが実情ではないでしょうか?
次に「カスタマイズとアドインとの連携」機能の、カスタマイズはメニューやショートカットキーをユーザーの好みで変更が可能なので、あると便利ですが無くても困りません。また、カスタマイズには、もう一つ、プログラミングして頻繁に繰り返す操作を自動化する機能がありますが、プログラミングする技術がなければ使いこなせませんし、無くても困る機能ではありません。例えば、いつも歯車を専門に設計するのであれば、これは便利な機能ですが、いつも違うデザインのものをモデリングするのには必要ありませんね。
アドインですが、初めから使いたいアドインがあるなら必要な機能になりますが、もしかして、後でアドインを利用するかもしれない程度なら、全く必要ない機能です。どうしても欲しいアドインを見つけた時にInventorのアップグレードを考えても遅くはないです。(多分、本当に必要なアドインを見つける方が大変です。)
「板金設計」、シートメタルとも呼ばれる機能は、製造に必要な情報や同時に展開図も作成できるので、あると重宝する機能でしょうが、たまにしか使わないなら特に必要有りません。板金の製造技術は本に載っていますし、板金の完成品だけなら普通に3Dをモデリングすれば良いです。また展開図が必要ならAutoCADで2次元図面を用意することもできます。(板金を良くデザインするなら欲しくなる機能ですが、「Autodesk Inventor Suite」を検討することになるので、Inventorのシートメタルの機能がモデリングをする上で、実際にどの程度使い物になるレベルか確認は必要です。)
「構造・機構設計」の構造解析は、荷重がかかった場合に部品が受ける影響を把握し、正常に機能するために必要な強度が十分備わっているかどうかを確認できる有限要素解析(FEA)機能になります。設計する物にもよりますが、デザイン性重視の製品や短期間で設計しなければならない場合、なかなか使いこなす機会がありません。既存製品の新デザインや構想が同じようなものは過去の蓄積された経験則から設計することが日常です。また、FEA機能を必要とするとなると、安全性を検討する必要のある製品でプロジェクトとして取り組む企業向けで、設計を下請けする企業でもほとんど使っていないでしょうから個人利用では必要はないでしょうね。
機構設計は、アセンブリモデルの製品の動的な挙動をリアルにシミュレーションでき問題なく機能することを確認する機能です。「Autodesk Inventor LT」には、アッセンブリー(部品組み立て)機能がないので、シュミレーションすることはできないのですが、複雑な動きの無い製品を設計する程度なら、例えば可動する部品は簡単なスイッチだけといった場合は、動作シュミレーションする必要もないので、どんな製品を設計するかで機構設計の機能が必要か判断することになります。
「配管・配線設計」機能の、配管機能であるチューブ・パイプ設計はチューブ、パイプおよびフレキシブル・ホースなどの配管設計専用ツールで設計にかかる時間を大幅に短縮設計にかかる時間を大幅に短縮することができます。一部だけ配管モデリングが必要といった場合は、通常のモデリングでも配管を3D化することはできるので、日常的または専門的に配管設計をする人以外は特に必要ありません。
「配管・配線設計」機能の、配線機能であるケーブルやハーネスが必要な長さや配線スペースを把握することができるます。複雑は配線を必要とする製品設計には是非欲しい機能ですが、数本の配線で済んでしまう程度の製品設計なら、通常の3Dモデリング機能でも検討するのに手間がかかりますがモデリングできますし、モデリング省略してしまう事も多いので、特に必要のない機能です。携帯電話などでの小型化進んでいる製品では配線などありません。これも、どんな製品を設計するかで検討することになります。
「標準部品ライブラリ」は、アッセンブリー機能のない『Autodesk Inventor LT』には必要のないものですが、アッセンブリーの際、ネジなどの規格品や標準部品集になります。標準部品を一々モデリングしなくても良くなるわけですが、Autodesk以外でも標準部品は無料で入手することもできます。
最後に、『AutoCAD Inventor LT』を購入を検討する上で、一番のポイントとなるのが「3Dアセンブリ モデリング (組立図)」機能です。
このアッセンブリー機能がないから仕事では使えないと、購入をあきらめてしまいそうですが、『Inventor LT』にも、マルチボディ機能という、1つのパーツファイルの中で、分割された複数のモデル形状を持てる機能があるので、アッセンブリ製品を設計することも可能です。また、派生コンポーネント機能により、マルチボディの一部として、外部ファイルの形状を表示させ、しかも、参照部品の修正にも追従させることができるのです。
3D-CADの組立品は、アッセンブリー機能を習慣的に使ってしまうので、マルチボディーで組み立て品をモデリングするのは、裏技的な上級テクニックの一つでした。この方法でのモデリングは、3D-CADの基礎を習得するのにも良いですし、実はマルチボディーで組立品を検討する方が設計しやすかったりします。できないのは、組立品の干渉チェック位のようですから、欲しい機能ですが無くても問題ありませんね。(干渉チェックできる3D CAD使っている人でも、干渉したデータを、完成品としちゃっている人もいるので、要は、どれだけ注意するかの問題なのでしょう。)
さて次に、『AutoCAD Inventor LT』は、仕事でも使えるレベルにあることがわかりましので、装備している機能を詳しく見てみることにします。
まずは、「3Dモデリング」機能。これは『Autodesk Inveontor Professional Suite』と全く同じで、ソリッドは勿論のこと、強力なサーフェス機能、面の品質解析、勾配角度、断面解析なども装備しています。他にもAlias製品からのサーフェスインポートや成形パーツ定義、プラスチック フィーチャ、ルールド フィレットなどの機能もあるのだから、これはすごいですね。ほとんど使わない機能もたくさんありそうです。
「2D作成機能」は、『AutoCAD LT』とは別に、『Inventor LT』に含まれる2次元図面作成機能で、3Dデータから簡単に図面に落とし込める機能で、正面図、側面図、等角図、詳細図、断面図、補助投影図などの図面ビューを指定するだけで、Inventor がジオメトリを投影して図面を作成してくる基本機能は備えているので、十分実用できるレベルです。なお、「DWGファイル操作」は、『Inventor LT』で開いたり保存したり直接操作できる機能になります。まぁ、これはあって当然の機能でしょうね。
「データ交換」は、充実しています。ほとんど使用しないファイルかもしれませんが、たまに必要になったりするので、これだけあれば十分ですね。
トランスレータ | インポート | エクスポート |
Alias (*.wire) | すべてのバージョン | |
CATIA V5 (*.CATPart) | R6〜R19 | R10〜R18 |
IGES (*.igs, *.ige, *.iges) | すべてのバージョン | 5.3 |
JT (*.jt) | 7.0、8.0、8.1、8.2、9.0、9.1 | 7.0、8.0、8.1、8.2、9.0、9.1 |
NX (*.prt) | 3〜6 | |
Parasolid (*.x_t, *.x_b) | 20.0 まで | 9.0〜20.0 |
Pro/ENGINEER (*.prt*) | 4.0 まで | |
Pro/ENGINEER Granite (*.g) | 5.0 まで | 1.0〜5.0 |
Pro/ENGINEER Neutral (*.neu*) | N/A | N/A |
SAT (*.sat) | 4.0〜7.0 | 4.0〜7.0 |
SolidWorks (*.prt, *.sldprt) | 2003-2009 | |
STEP (*.stp, *.ste, *.step) | AP214、AP203E2 | AP214、AP203E2 |
STL (*.stl) | | N/A |
XGL/ZGL (*.xgl, *.zgl) | | N/A |
「レンダリング (Inventor Studio)」機能は、とっても美しいいです。デザイナーやエンジニアは、説得力のある手段で上司に設計案を伝えたり、協力会社に設計内容を説明し、見込み顧客の獲得を期待することができるというのがコンセプト。
これを使いこなした能動的な行動は、会社での出世はイチ早く、個人事業者なら設計依頼が猛烈に増えそうです。
「DWFおよびPDFパブリッシュ」機能について、DWFはCADを持っていない人でもビューワーを利用することで3Dモデルを閲覧することができる軽量なファイルで、PDFはCADで表示しているイメージをそのまま印刷したような軽量ファイルになります。これらの機能は、Eメールなどでデータを送受信する際にあると非常に便利です。転送するだけでも一苦労する3Dモデルを送らなくて、遠方の人とデザインや設計検討をすることが、簡単にできるようになりますね。
『AutoCAD Inventor LT』には、これだけの充実した機能がありますから、3D-CAD習得のためだけでなく、個人事業者が仕事で利用するにも、会社で残業せずに家で続きをモデリングするなんてことも、気軽にできるようになりますね。
ミドルレンジの、『AutoCAD Inventor LT』が低価格で販売されたことに、あまりに興奮してしまったので、今回の記事はあまりにも長くなってしまいました。
最後まで、読んでくださった方に感謝の気持ちを込めて、お得な情報を書いておきます。税込み価格¥236,250の、『AutoCAD Inventor LT』ですが、オンラインで最安値で購入できるところを見つけましたので、ご検討されてる参考までにどうぞ。
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